ONLINE GALLERY
artworks
07コレクションタイトル.png)
真夏の南ヨーロッパへ。イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルで、旅の風景画制作を展開。世界遺産の街で古い建物の窓がリズミカルな「フィレンツェの夏」、住民と交流する「ジェノヴァの坂道」、まばゆい紺碧海岸で働く生真面目な女性ホテル従業員、大声でののしるカップルやリスボンの街の美しさを訴える奥さん、…。休日の散策のようなコレクション。
07コレクションリスト.png)
011.jpg)
イタリア・フィレンツェの、ヴェッキオ宮殿にある「アルノルフォの塔」が見える川沿いからの景色。
七月の青空とオレンジ色の屋根が視界を和ませ、古式ゆかしい建物の窓もリズミカルで、歩き疲れた身には心地良い。■
012.png)

ジェノヴァはイタリアの歴史ある古い街。この長い階段の途中で午後一時から四時まで描いていた。
左手のドアから出入りするアパートメントの住民の何人かは幾度も挨拶を交わした。下から大きな荷物を持った老婆を手伝ったり、住民と立ち話をしていた。自分の奥さんを連れてきて自慢している男性もいた。■


海の色が異質な明るさだったのが印象的。この絵を描く何年か前に飛行機の窓から見ていても、この辺りが異様に美しかったのを憶えている。浜辺はグレーの小石で、砂浜ではないため、素足で歩くとやや痛い。
イタリアのジェノヴァから電車をいくつか乗り継いで、朝から半日以上かけ、コート・ダジュール(紺碧海岸)のこの海岸線の風光明媚を車窓から楽しんだ。
フランスのニースのホテルに着いて、フロントの若い女性スタッフからルームキーを受け取る時、テキパキと手続きする中で朝食の時間や場所、ホテル内の様々なサービスや注意事項もあり、英語で話してくれたけど、この説明が結構長かった。
ここまでの旅で十日以上各地で転々とホテル暮らし。その日も半日がかりの移動で疲れていた。テキパキ娘は横にいるお兄さん上司の手前もあってか端から端までキチンキチンと説明をこなし、最後に「…よろしいですか?!」と聞かれて、私は「たぶん!」と半ば冗談で言ったら、心配顔だったお兄さんはすぐにそれを察してニッコリしたけど真面目娘はややむくれた様子だった。でもこれでフロントとは少し打ち解けた。
部屋に入ってテレビをつけたらツール・ド・フランスの熱戦の生中継番組をやっていた。フランスに来たんだな、と思った。■


木蔭のベンチに座り、ふと見上げた時の風景。窓の隙間からはひょっとするとこの家の誰かがこっちを見ていたかも知れないな。
こういう角度の風景画はあまりないと思うし、この古びた建物の装飾も見ていて楽しい。時刻は夜の八時くらいだったが、真夏だったので日が長く十時くらいまでは昼間の明るさだったと思う。
三週間前にローマに着き、フィレンツェやトリノに寄って、ジェノヴァに行ってから地中海に出て、モナコやニースを通ってバルセロナに行き、イベリア半島の内陸をまっすぐマドリードに向かって駆け抜けて、今その対岸のリスボンにいる。
ずっと毎日絵を描きながら旅をしていいかげん疲れていた。制作上の疲労だけではなく、要領を得ない移動や様々な分からない言葉、食事や日常生活、小さなトラブルの数々、楽しい事ももちろんあったけど、リスボンに着いた時にはようやくこれで日本に帰れるなと正直安心した。疲れか安堵か両方か、だからベンチに腰掛けて思わず空を見上げたのかも。■
